一目均衡表は、多くのトレーダーに使われているトレンド系インジケーターです。様々な点でユニークなツールですが、最大の強みは、複数のデータを使用することにより、より深く、よりわかりやすいプライスアクションをトレーダーに提供していることです。一目均衡表が非常に視覚的なツールであるため、トレーダーは「一目で」判断し、フィルタリングすることができます。
この包括的なガイドでは、プロのような一目均衡表の見方、一目均衡表の設定方法や、取引を成功させるために重要な一目均衡表の雲について詳しく解説しています。
一目均衡表について
一目均衡表のチャートシステムは、細田剛一という日本の新聞記者によって開発されました。細田氏は第二次世界大戦前に、多くの学生を雇って最適な計算式やシナリオを考えてもらい、開発に着手しました。これは現代でいう取引システムをテストするためにコンピュータでシミュレーションをするようなものだったそうです。システム自体は、20年以上のテストの後、細田氏がシステムの最終版を含む著書を出版し、1968年に最終的に一般に公開されました。
一目均衡表は細田氏が著書を出版して以来、アジアのトレーダー達に広く使われ、通貨、商品、先物、株などの取引に寄与してきました。アジアで人気だったにもかかわらず、欧米では1990年代に入ってからも、「一目均衡表」が登場することはなく、英語での使い方が全くわからないため、一般の取引参加者からは「エキゾチック」なインジケーターとして扱われていました。しかしついに、21世紀初頭の今、欧米のトレーダーもこのチャートシステムの力を理解し始めています。
一目でわかる均衡表
一目でわかる均衡表を適切に訳した「一目均衡表」という名称は、後述するように、その仕組みや使用方法を一目でわかるように説明しています。
一目均衡表は主に5本のラインで構成されていますが、取引の意思決定をする際には、個別に使用するのではなく、「一目で」わかるような統合された価格行動の「全体像」を把握するために一緒に使用されます。このように、一目均衡表のチャートを見るだけで、センチメント、モメンタム、トレンドの強さをほぼすぐに理解することができます。
価格が、相対的に均衡状態にあるか、不均衡状態にあるかという観点で測定されます。細田氏は、市場は人間の集団の力学や行動を直接反映したものであると強く信じていました。人間の行動は、生活や相互作用の中で、均衡から離れたり、均衡に戻ったりして一定の周期的な動きで表されると考えたのです。一目均衡表を構成する5つの要素のそれぞれが、この均衡または一目均衡表のバランスを独自に反映しているのです。
一目均衡表に関する用語
一目均衡表チャートは、5本の独立したラインで構成されています。これらのラインは、完全な「一目均衡表の絵」を形成するために連動しています。各線がどのように計算されるかの概要は以下の通りです。
日本名 | 英語名 | 式 | ||||||
転換線 | turning line | (9日間の高値+9日間の安値)÷2 | ||||||
基準線 | standard line | (26日間の高値+26日間の安値)÷2 | ||||||
遅行スパン | lagging line | 当日の終値を26日前にさかのぼって記録 | ||||||
先行スパンA | 1st leading line | (転換線+基準線)÷2を26日先に記録 | ||||||
先行スパンB | 2nd leading line | (52日間の高値+52日間の安値)÷2を26日先に記録 |
先行スパンAとBは、「一目均衡表の雲」を形成する大切なラインといえます。この「雲」とその機能については、「雲」の項で詳しく説明します。
下のチャート(図1)は、これら5つの構成要素のそれぞれを視覚的に表しています。

図1 – 一目均衡表の構成要素
一目均衡表の設定
上の「一目均衡表の構成要素」を見ていただければわかるように、各ラインに応じて計算日数が設定されてことがわかります。細田氏は、研究とテストを重ねた結果、9、26、52の設定が最適な結果を得るための理想的な一目均衡表の設定であると判断しました。26という数字は、当時の日本の標準的な一月あたりの営業日(土曜日を含む)から導き出されたものです。9は1週間半、52は2ヶ月を表します。
一目均衡表の標準設定は9、26、52です。
欧米の標準的な労働月には土曜日が含まれていないことを考えると、一目均衡表の設定である「9」「26」「52」のが本当に有効かどうかについては確かに議論の余地があります。また、24 時間取引される外国為替のように標準的な営業時間がない市場では、より適切な設定があるのではないかとの指摘もあります。ただし、イーキャピタルや他のほとんどのプロの一目均衡表トレーダーは、9、26、52の標準設定は非常にうまく機能しており、変更する必要はないと同意しています。
一目均衡表は、全体で正確に調整されており機能しているため、一目均衡表の設定を標準以外のものに変更すると、システムのバランスを崩したり、無効な信号が発生したりする可能性があるとの意見があります。
転換線
前述したように、転換線は以下のように記録されます。
(9日間の高値+9日間の安値)÷2
転換線を9日単純移動平均線(SMA)に例える人も多いかもしれませんが、SMAが過去9日間の価格の最高値と最安値の平均値を計算するという意味では、転換線とは全く異なります。細田氏は、終値の平均値を使うよりも、ある一定期間の極端な価格の平均値を使う方が、より良い均衡を測ることができると考えたのです。今回の転換線についての説明により、「一目均衡表」のチャートに見られる「均衡」の重要な点により踏み込むことができるでしょう。
下の図2のチャートを見てみましょう。

図2 – 転換線と9日SMAの比較
チャートを見るとわかるように、転換線は若干緩やかであるのに対し、9日SMAはそうではありません。これは、終値の平均値ではなく、高値・安値の平均値を使っているためです。このように、値幅のある時期には、レンジの中間点をフラットに明確に示すことができます。
転換線が横ばいの場合は、基本的に過去9日間がトレンドレス状態だったことを示しています。
また、転換線が9日SMAよりもはるかに正確な価格サポートのレベルを提供していることがわかります。ただ1つの例外を除いて、チャートの3つの矢印で示されたエリアでは、価格の動きは転換線の上にとどまっていますが、価格は何度もSMAを下回りました。これは、転換線がより保守的に計算されているため、価格の小さな動きに反応しにくくなっているためです。下降トレンドを示すチャートでは、転換線も同様に抵抗線として機能します。
転換線の角度は、過去9日間の値動きの相対的な勢いを知ることもできます。転換線の角度が急な場合は、短期間にほぼ垂直方向に価格が上昇しているか、強い勢いがあることを示し、逆に角度が低い場合は、勢いが弱いか、勢いがないことを示します。
転換線と基準線は、どちらも短期トレンドを測るものです。基準線が26日間に基づいたラインであるのと比較すると、転換線はより短期のラインといえます。このように、転換線は非常に短期的な性質を持っているため、「一目均衡表」の他のラインと異なり信頼性のトレンド転換の指標と見ることはできません。しかし、他の一目均衡表の要素で確認することができます。
転換線の主な使い方の一つに、基準線との関係があります。転換線が基準線より上にあれば強気のシグナルといえます。同様に、「転換線」が「基準線」を下回れば、「弱気」となります。この2つのラインがクロスする場合は、それ自体が売買シグナルとなります。
基準線
基準線は、以下のように記録されます。
(26日間の高値+26日間の安値)÷2
基準線は、一目均衡表の「中心線」の一つであり、その用途は多岐にわたります。転換線と同様に、高値と安値の平均値を計算したものですが、転換線の9日と比較し、26日という長い期間で計算しています。このように、「基準線」は、「転換線」と同じような情報を、より長い時間軸で提供してくれるのです。
計算に入れる期間が長いため、短期的な価格の強さ、均衡度の指標としては、転換線よりも信頼性の高いものとなります。価格がレンジで推移している場合は、その価格の均衡点を平面的(フラット)に表示します。しかし、過去26日間の高値・安値のいずれかを超えた場合には、それを反映して、それぞれ上向き・下向きになります。このように、短期的なトレンドは、この「基準線」の方向性で測ることができます。また、角度は、トレンドの強さや勢いを示します。
価格の均衡は、期間が長いことを考えると、転換線よりも基準線の方がより正確に表現できます。このように、重要な価格のサポートとレジスタンスレベルとして、基準線はとても信頼できます(図3の黄色ハイライト部分参照)。

図3 – 基準線のサポート
ハイライトされた価格帯は、「均衡」や「膠着」を強く表現しているため、循環的に「基準線」から短期的に離れたり、戻ったりする傾向があります。このように、短期間に価格が急激に上下しても、「輪ゴム」のような効果が現れ、価格を引き寄せて均衡状態に戻します。その名の通り「基準線」であり、価格は常にそのレベルに戻ろうとします。この現象は、図4に示すように、トレンドが無い場合に特に顕著となります。

図4 – 基準線の「輪ゴム」効果
上で説明した基準線の動きを考えると、トレーダーは基準線を低リスクのエントリーポイントとしてだけでなく、しっかりとしたストップロスポイントとしても効果的に利用することができます。この2つは、「一目均衡表の取引戦略」のセクションで詳しくご紹介するように、基準線クロスと転換線/基準線クロスの両方の戦略で幅広く採用されています。
遅行スパン(遅行線)
一目均衡表の遅行スパンは、以下のように記録されます。
当日の終値を26日前にさかのぼって記録
遅行スパンとは、一目均衡表の特徴の一つである、ある線を前後に時間をずらす事により、価格の動きをより明確に把握する為の線です。遅行スパンの場合は、現在の終値を26日間分後ろにずらしています。最初は混乱するかもしれませんが、現在のプライスアクションと26日前のプライスアクションの比較がすぐにわかるので、トレンドの方向性を判断するのに役立ちます。
もし遅行スパンが26日間前の価格(ローソク足)よりも低い場合は、より弱気の値動きになる可能性があることを示しています。逆に、遅行スパンが26日間前の価格(ローソク足)を上回っている場合は、強気の値動きが続く可能性があることを示しています。
下の図5と6のチャートを見てみましょう。

図5 – 強気の遅行スパン

図6 – 弱気の遅行スパン
遅行スパンは、トレンドの方向性を提供してくれるだけでなく、サポートとレジスタンスの明確なレベルを提供してくれます。一目均衡表の実践者は、このようにして、遅行スパンによって作られたポイントに水平線を引いて、サポート/レジスタンスレベルを見ることができ、テクニカル分析や取引の意思決定に活用することができます(図7を参照)。

図7 – 遅行スパンのサポート/レジスタンス
先行スパンA
先行スパンAは、以下のように記録されます。
(転換線+基準線)÷2を26日先に記録
先行スパンAは、先行スパンBとともに、一目均衡表日足チャートの基礎となる雲を形成することで知られています。先行スパンAもまた、一目均衡表特有のラインの一つです。これは、26日分先になっています。転換線と基準線の平均値であるため、先行スパンAはそれ自体が均衡の指標といえます。細田氏は、価格がサポートとレジスタンスに従う傾向があることをよく認識していたので、この線を26日分前倒しにすることで、後に価格が進行した時に現在の価格の動きと26日前のサポートとレジスタンスがどこにあるのかを「一目で」把握することができるようにしました。
先行スパンB
先行スパンBは、以下のように記録されます。
(52日間の高値+52日間の安値)÷2を26日先に記録
先行スパンBは、先行スパンAとともに、一目均衡表の基礎となる雲を形成していることで知られています。先行スパンBは、「一目均衡表」システムの中で最も長期的な均衡を表しています。先行スパンAのように過去26日間を計算するのではなく、先行スパンBでは、過去52日間の高値と安値の平均値を計算しています。これにより、現在の値動きよりも先に、この長期的な均衡表を見ることができ、十分な情報に基づいた取引判断ができるようになります。
先行スパンAとBを単独で使用することは可能ですが、その真の力は組み合わせの雲にあります。
一目均衡表における雲
はじめに
雲は、一目均衡表の「心」です。「一目均衡表」の中で最も目につく部分である「雲」を見ることで、「大局的な」トレンドとそのトレンドと価格の関係をすぐに見分けることができます。また、雲は、他のチャートシステムで提供されているような一次元レベルではなく、サポートとレジスタンスの深い多次元的な画面を提供しています。これが一目均衡表の最もユニークな側面の一つでもあります。このように、サポートとレジスタンスが単にチャート上の一点ではなく、市場のダイナミクスに応じて拡大したり縮小したりするという、真の機能のあり方を表しています。
この雲を構成している2本の線(先行スパンAとB)、それぞれが長期的なサポートとレジスタンスの全体像を示しています。この2本の線の間に、「雲」があり、この雲は、本質的には「トレンドがない」空間であり、この価格の均衡帯が価格の動きを予測不能で不安定なものにしています。
雲の中での取引は、トレンドがなく不確実性が高いためおすすめできません。
サポート/レジスタンスとしての機能
前述したように、雲の最も特徴的な点は、他のチャートシステムよりも信頼性の高いサポート/レジスタンス機能があることです。雲を利用すれば、1つの水準ではなく、過去の値動きと連動して、多面的にサポート/レジスタンスを見ることができます。下の図8のUSD/CADのチャートでわかるように、雲のサポートとレジスタンスが不気味なくらいに機能していることがわかります。

図8 – 雲のサポート/レジスタンス
雲の威力は、従来のサポート/レジスタンスと比較すると、さらに明らかになります。下の図9のチャートでは、下降のトレンドライン(A)点とレジスタンスライン(B)点が1.1867にあります。価格は、下降トレンドラインと(C)点のレジスタンスラインの両方を突破し、上にブレイクすることができました。「一目均衡表を知らない」トレーダーは、これをこのペアをロングするための強力なシグナルとみなすでしょう。一方、「一目均衡表を知っている」トレーダーは、雲の上限の位置を見て、雲の強い抵抗を考えると、この時点でロングするのは非常にリスクが高いと判断できるでしょう。実際、価格は雲の上限で跳ね返り、約250pips下落しました。これは、前者のロングポジションのロスカットを巻き込んで下落した可能性が高いといえるでしょう。
前回の負けトレードに不満を感じていた前者のトレーダーは、D点で高値を突破し、それを上抜けたことを見て、ロングするチャンスを見つけました。一方、後者のトレーダーは、価格がトレンドレスエリアにあると知っており、雲の中で動いているだけなので、不確実な状況だと判断します。また、雲の上限である先行スパンBが近くにあり、かなりの抵抗になる可能性があることを認識しているので、この怪しげなラインをスルーして、より良いトレードチャンスを待ちます。このペアは一目均衡表雲の上限を少し超え、50pips上昇した後、500pips近く下落しました。
この例では、サポートとレジスタンスに関する一目均衡表の多次元的な見方が、従来にはない発想をトレーダーに与えていることを示しています。これにより、一目均衡表を知っていれば、効率的でリワードの高い取引機会のみを選択し、怪しい機会を見分けることができます。知らない場合は、ブレイクアウトトレードがフェイクで無いことを「期待」するしかありません。

図9 – 通常のサポート/レジスタンス理論 vs 一目均衡表の雲
一目均衡表の雲と価格の関係
基本的には、価格が雲の上で推移している場合は、現在の価格が過去の平均値よりも高くなっていることを示しているので、強気のシグナルとなります。反対に、価格が雲を下回っている場合は、弱気になっていることを示しています。もし、価格が雲の中にいる場合は、雲の中は、均衡または停滞と認識できるため、トレンドが失われていることを示しています。このように一目均衡表を使用する場合は、通常、チャートのセンチメントを測るために、価格と一目均衡表の雲の関係を見極めます。取引を開始する前に、価格が雲に対して正しい側(ロング取引では上、ショート取引では下)に位置するのを常に待ちます。価格が雲の中で取引されている場合は、価格が雲の上または下に落ちるまで、取引するのを待ちます。
雲の奥義
一目均衡表のチャートを見ているとわかるように、雲の厚さには大きな違いがあります。厚さは市場のボラティリティを示すものであり、厚いものほどボラティリティが高く、薄いものほどボラティリティが低いことを示しています。この現象を理解するためには、雲を構成する2本の線、すなわち「先行スパンA」と「先行スパンB」が何を表しているのかを覚えておく必要があります。先行スパンAは、転換線と基準線の平均値であり、「期間」は、転換線と基準線で計算をしている期間であることから、9~26日間であるといえます。一方、先行スパンBは、過去52日間の高値・安値の平均値を計算しています。このように、先行スパンAは、より短い期間の均衡表を計算しているため、2つのうちより「短期」の線と言えます。
下の図10のチャートを見てみましょう。過去52日間、価格は合計793pipsのレンジを形成しました(高値1.2672から安値1.1879まで)。このレンジの中点または平均値は1.2275であり、これが先行スパンBの値です。先行スパンAは、短期的なプライスアクションへの反応が強いため、安値の1.1879からの上昇の値動きを反映しており、雲が徐々に薄くなっています。一方、先行スパンBは、直近52日間の最高値1.2672からの値動きに追随して下降を続けています。このまま価格が上昇を続けると、先行スパンAと先行スパンBが入れ替わり、先行スパンAが先行スパンBの上にクロスする、いわゆる「雲のねじれ」と呼ばれる現象が発生します。

図10 – 雲の厚さ
雲は市場のボラティリティに応じて伸縮します。ボラティリティが高くなると(ある通貨ペアの価格が短期間に劇的に変化すると)、短期の先行スパンAは価格(ローソク足)に沿って先に移動しますが、先行スパンBは過去 52 年間の高値と安値の平均値であるため、大きく遅れることになります。このように、ボラティリティが上がると厚い雲ができ、下がると薄い雲ができます。
一目均衡表における雲の厚さはボラティリティの大きさ
トレードの観点からは、雲が厚いほど、サポートやレジスタンスが強くなります。これは、リスク管理と取引戦略を微調整するために利用することができます。例えば、雲が厚い場合は雲が薄い場合に比べて、価格が雲の下を突破する可能性はかなり低くなるので、ポジションのサイズを大きく持つことを検討できます。また、すでにポジションを持っていて、価格が非常に厚い雲に近づいている場合は、雲の境界線で利益を確定することも考えられます。
一般的には、厚い雲であればあるほど、サポート/レジスタンスは強くなります。
雲のセンチメント
雲と価格の関係を通してセンチメントやトレンドを見ることができるだけでなく、雲自体にもセンチメントがあります。このことは、雲が先行スパンAと先行スパンBで構成されていることを考えれば、納得がいくと思います。先行スパンAが先行スパンBの上にある場合は、センチメントは強気です。逆に、先行スパンAが先行スパンBより下にある場合は、センチメントは弱気です。
この「雲のセンチメント」の概念は、以下の図11で確認することができます。

図11 – 雲のセンチメント
先行スパンAとBが入れ替わったとき、これは長期的な視点で全体的なトレンドの変化を示しています。このように、現在のトレンドだけでなく、今後のトレンドの変化を知る手がかりを得るために、チャートの先頭にある雲のセンチメントに注目する必要があります。先行スパンのクロスは、この雲のねじれを、エントリーシグナルとして、また、継続シグナルや確認シグナルとして実際の取引戦略に利用できます。この戦略の詳細については、一目均衡表の取引戦略のページで解説しています。
フラットトップ/フラットボトムな雲
よく見られるフラット(平らな)な雲は、「均衡表」を理解する上で重要な要素です。フラットな基準線が価格に与える「輪ゴム効果」と同じように、平らな先行スパンBも同様に、近くにある価格を引き寄せる作用があります。その理由は簡単で、フラットな先行スパンBは、過去52日間のトレンドレスな価格の中間点、つまり価格の均衡を表しているからです。価格は常に均衡に戻ろうとするものであり、フラットな先行スパンBに引き付けられるのです。
強気のトレンドでは、このフラットな先行スパンBは、雲の下限になり、弱気のトレンドでは、雲の上限になります。この知識を利用して、エグジット戦略に応用することができます。例えば、上昇トレンド中の売りのブレイクアウト戦略として雲の下限である先行スパンBの10pips下に売り注文を出すのではなく、単なる戻しの「引力」に巻き込まれないよう別のポイントを探して注文を出します。この方法では、トレーダーが経験した誤ったブレイクアウトトレードの数を最小限に抑えることができます。
フラットな雲の例については、下の図12のチャートを参照してください。

図12 – フラットトップ/フラットボトムな雲
トレンドトレード
“トレンドフォロー”とは、様々な市場における長期的な動きを利用した投資戦略です。このアプローチを使用するトレーダーは、現在の市場価格の計算、移動平均線、チャネルブレイクアウトを使用して市場の一般的な方向性を判断し、トレードをします。このアプローチは、長期的でシステマチックです。トレンドフォロー戦略を使うトレーダーは、市場の動きや価格水準を予測することが目的ではありません。
一目均衡表とトレンドトレード
一目均衡表の力を利用しようとする場合は、第一にそれがトレンドを判断するツールであることを理解しなければなりません。さらに、「一目均衡表」を使用するトレーダーは、トレンドトレードの基本的な考え方をしっかりと理解していることが前提となります。トレンドトレードは、一目均衡表を利用して長期的な成功を収めるためには絶対に重要な前提です。一目均衡表だけでは、トレンドフォローの基本的な哲学を学ぶことはできません。そのため、FXで成功する為にはその他の取引に関わる重要な要素についても学ばなければなりません。
トレンドトレーダーとは:
- 市場がどこに行くかを予測してはいけない
- 価格の“トップ”と”ボトム”をとろうとしてはいけない
- 常にトレンドを尊重し、それに従ってトレードをする
- トレンドの終焉は”直感”ではなく、チャートで判断する
- トレンドの始まりと終わりが明確にあることを確認する
- 長期的な視点でプライスアクションを見て、ボラティリティに振り回されない
- トレンドが成熟するにつれ、一時的なドローダウンの期間があることを理解する
- トレンドトレードは大きな利益を得ることができるが、同様に大きな損失を被ることもあることを理解する
- トレンドは複数の時間軸で発生することがあることを理解する
トレンドトレードで成功するための秘訣は、99%が精神力(トレード心理学)です。自分の心をコントロールできればトレードは成功するでしょう。例えば、保持しているポジションに逆らって価格が推移しているように見える!トレンドは終わったに違いない。今すぐ売るべきだ!と囁いてくる悪魔に対して打ち勝ち、長期的な視点を持ち続けていれば、成功し、幸せでストレスのないトレンドトレーダーになるチャンスは十分にあります。しかし、耐えきれずにそれを無視して長期に焦点を当て続けることができない場合はFXトレーダーとして成功することは難しいでしょう。
一目均衡表は、トレンドトレードのために作られたチャートシステムであるため、経験豊富なトレーダーには、他のどのようなトレンドトレードシステムよりも、より深いトレンドの見方、より安全なエントリーとエグジットシグナルを提供してくれます。そして、その潜在能力を最大限に発揮するためには、適切な考え方と組み合わせる必要があります。
注意:このFXブログの記事ではトレンドトレードの話のみをしています。また、複数のタイムフレームを使った逆張りトレンドトレードの戦略は、簡単に使うことができます。
一目均衡表 FXの攻略法
最初に大事なのはこれ!
一目均衡表とは、5本の線が連動して最終的な結果を出す、細かく調整された統合的なチャートシステムのことです。ここでは「システム」という言葉を強調していますが、これは「一目均衡表」の見方を理解し、このセクションで紹介する様々な取引戦略をどのように使うかを理解する上で絶対的な鍵となるからです。以下で紹介するすべての戦略は、「一目均衡表」単独に対してのものはなく、他のツールと併用される場合に対して適用されることになります。つまり、一目均衡表に対してある戦略に合致するシナリオが発生したとしても、そのシグナルが高確率のトレードに繋がるかどうかを判断するためには、他の要素も考慮しなければならないということです。別の見方をすれば、「一目均衡表」はシステムであり、トレードするための個別の戦略は、その大きなシステムの中の「サブシステム」に過ぎないということです。したがって、一目均衡表のチャートが伝えていることの全てを考慮に入れ無いと、長期的な成功は難しいでしょう。
ただし、誤解して欲しく無いのは以下に紹介する戦略は非常に強力で、賢く使えば一貫した結果をもたらすことができるということです。これらの戦略を採用する際には、常にこのことを念頭に置いていただきたいと思います。
転換線/基準線クロス
転換線/基準線クロスは、一目均衡表の中で最も一般的な取引戦略の一つです。このストラテジーのシグナルは、転換線が基準線をクロスしたときに発生します。転換線が基準線を上抜けた場合は、強気シグナルとなります。同様に、「転換線」が「基準線」を下回れば、「弱気シグナル」となります。一目均衡表システム内のすべての戦略と同様に、転換線/基準線クロスは、取引を決定する前に、より大きな一目均衡表の観点から見る必要があります。
一般的に、転換線/基準線クロスkurosuの戦略は、大きく分けて「強」「中」「弱」の3つに分類されます。
強い転換線/基準線クロスシグナル
雲の上で転換線が基準線を上向きにクロスした場合は、強い買いシグナルが出ています。
雲の下で転換線が基準線を下向きにクロスした場合は、強い売りシグナルが出ています。
中程度の転換線/基準線クロスシグナル
雲の中で転換線が基準線を上向きにクロスした場合は、中程度の買いシグナルが出ています。
雲の中で転換線が基準線を下向きにクロスした場合は、中程度の売りシグナルが出ています。
弱い転換線/基準線クロスシグナル
雲の下で転換線が基準線を上向きにクロスした場合は、弱い買いシグナルが出ています。
雲の上で転換線が基準線を下向きにクロスした場合は、弱い売りシグナルが出ています。
転換線/基準線の分類の一例として、下記の図13を参照してください。

図13 – 転換線/基準線クロスの分類
でも待ってください。遅行スパンはチェックしましたか?
以上の3つの分類を念頭に置いて、もう1つの要素、つまり「遅行スパン」を追加します。遅行スパンの詳細の項で説明したように、この要素はセンチメントの大きな役割を果たし、一目均衡表チャートシステムのすべての取引シグナルに影響を与えます。前述した転換線/基準線クロスの3つの分類のそれぞれは、クロス時の遅行スパンとの位置関係でさらに分類することができます。転換線/基準線クロスで「買い」シグナルが出ており、その時点での遅行スパンの位置が価格(ローソク足)の上にある場合は、その買いシグナルがより強くなります。同様に、クロスで「売り」シグナルが出ており、その時点で遅行スパンが価格(ローソク足)の下にある場合は、そのシグナルをさらに確認することができます。もし、価格(ローソク足)に対する遅行スパンの位置が、転換線/基準線クロスのセンチメントと反対であれば、そのシグナルは弱くなるということです。
エントリー
転換線/基準線を使用したエントリーは非常に簡単で、クロス後、終値が固まった後、クロスした方向に注文を出します。ただし、一目均衡表取引ルールに従って、トレーダーは、クロス付近の重要なサポート/レジスタンスのレベルに留意し、注文する前に、それらを確認しなければなりません。
エグジット
エグジットは、チャートの状況によって異なります。最も一般的なエグジットシグナルは、取引の反対方向に転換線/基準線がクロスした時です。しかし、リスク管理と時間軸に応じて、他のトレードと同様に、早い手仕舞い、または他の一目均衡表の信号に基づいて手仕舞うことがあります。
ストップロスの配置
転換線/基準線を使用した戦略は、他の戦略とは違い、ストップロスの配置をするために一目均衡表は使用しません。その代わりに、トレーダーは自分の時間軸と資金管理のルールを考慮して、ストップロスの設定方法を探す必要があります。
利確目標の設定
転換線/基準線クロス戦略の利確目標は、2つの方法でアプローチすることができます。デイトレーダー/スイングトレーダーの視点では、キーレベルを使用して利確目標を設定することです。ポジショントレーダーの視点では、特定の目標を設定せずに、現在のトレンドが取引の反対方向に転換線/基準線クロスが発生するのを待つというアプローチです。
ケーススタディ
このクロスは、雲の中で発生したので、「中」の買いシグナルと考えて、価格が雲の上に上がるのを待ってから、ロングエントリーをすることにします。B点(1.5918)で雲の上に来たので、ここでロングエントリーをします。ストップロスは、センチメントが無効になる場所を探します。この場合、雲の下限は、C点(1.5872)でちょうど設定できます。
エントリーとストップロスの注文を出したら、あとはただ取引が展開されるのを待つだけでその後10~11日間は順調に上昇し、取引15日目には、転換線がD地点で基準線を下回り、大きく下落しました。

図14 – 転換線/基準線クロスのケーススタディ
このトレードのリスク管理を最大限にするために、価格がエントリーから保守的な距離になった時点で、ストップロスを一緒に上に移動させることもできました。また、ストップロスを雲の下限のすぐ下に置いたまま、雲と一緒にストップロスを上に移動させるという方法もあります。より厳しいリスク管理をするためには、基準線でストップロスを移動させて、基準線が上昇している間は、そのラインより5~10ピップ下でストップロスを設定するという方法もあります。
基準線クロス
基準線クロスは、一目均衡表システムの中でも、最も強力で信頼性の高い取引戦略の一つです。ほぼすべての時間帯で優れた結果を得ることができますが、取引量の低い時間帯ではボラティリティが高くなるため、信頼性はやや低くなります。価格(ローソク足)が基準線を超えたときに、基準線クロスシグナルが出ます。価格が下から上に向かってクロスした場合は、強気シグナルとなります。上から下にクロスした場合は、弱気シグナルです。しかし、一目均衡表システムを利用したすべての取引戦略と同様に、基準線クロスシグナルは、取引する前に、一目均衡表全体に対して評価する必要があります。
一般的に基準線クロス戦略は、同じく大きく分けて強・中・弱の3つに分類できます。
強い基準線クロスシグナル
雲の上で価格が基準線を上向きにクロスした場合は、強い買いシグナルが出ています。
雲の下で価格が基準線を下向きにクロスした場合は、強い売りシグナルが出ています。
中程度の基準線クロスサイン
雲の中で価格が基準線を上向きにクロスした場合は、中程度の買いシグナルが出ています。雲の中で価格が基準線を下向きにクロスした場合は、中程度の売りシグナルが出ています。
弱い基準線クロスシグナル
雲の下で価格が基準線を上向きにクロスした場合は、弱い買いシグナルが出ています。
雲の上で価格が基準線を下向きにクロスした場合は、弱い売りシグナルが出ています。
基準線クロスの分類の例については、以下の図15の表を参照してください。

図15 – 基準線クロスの分類
遅行スパン確認
転換線/基準線クロス戦略と同様に、経験豊富な一目均衡表トレーダーは、基準線クロスのシグナルを確認するために、遅行スパンを有効利用します。上記で説明した3つのクロスの分類は、クロスが発生した時点での価格(ローソク足)と遅行スパンの位置関係に基づいて、さらに分類することができます。クロ価格(ローソク足)スが「買い」のシグナルであり、その時点で遅行スパンが価格の上にあれば、その買いシグナルはより強くなります。同様に、クロスが「売り」シグナルであり、その時点で遅行スパンが価格の下にある場合は、そのシグナルをさらに強く確認することができます。
エントリー
基準線クロスのエントリーは非常に簡単で、クロスが終値で固まった後、クロスした方向にFX注文を発注します。ただし、一目均衡表の取引ルールに従って、トレーダーはクロスの近くにある重要なサポートやレジスタンスのレベルを確認しなければなりません。(成行注文、逆指値注文、指値注文についての詳細を読む)。
エグジット
取引の反対方向に価格がクロスし、ストップロスが発生した時点で取引を終了します。トレーダーが利益を最大化するためには、基準線の動きに合わせてストップロスを動かすことが重要です。
ストップロスの配置
一目均衡表における基準線クロス戦略は、ストップロスを基準線自身が決定、管理するという点が特徴的といえます。これは、基準線が価格の均衡を強く表しているため、センチメントを決定するのに優れているからです。したがって、強気の基準線クロスが出た後、価格が基準線の下に戻って来てしまった場合は、強気のセンチメントをさらに強めるための十分な勢いが存在しないことを示しています。
基準線クロスで取引する場合、トレーダーは基準線の現在値を確認し、エントリーした基準線の反対側に5~10pipsのストップロスを置きます。ストップロスの「バッファ」を何pipsにするかは、ペアのダイナミクスや過去の相場の動き、トレーダーのリスク許容度によって異なりますが、ほとんどの状況では5~10pipsが適切でしょう。ショートでエントリーする場合、現在の基準線のすぐ上にストップロスを置き、ロングでエントリーする場合、現在の基準線のすぐ下にストップロスを置きます。
取引が始まったら、常に5~10pipsの「バッファ」を維持した状態で、基準線の動きに合わせてストップロスを上下させます。このようにして、基準線自体が「トレーリングストップロス」のような役割を果たし、トレーダーはリスク管理をしっかりと行いながら利益を最大化することができます。
利確目標の設定
基準線クロス戦略の利確目標は、2つの方でアプローチすることができます。デイトレーダー/スイングトレーダーの視点では、キーレベルを使用して利確目標を設定することです。ポジショントレーダーの視点では、特定の目標を設定せずに、現在のトレンドが取引の反対方向に基準線クロスが発生するのを待つというアプローチです。
ケーススタディ
下の図16のUSD/CHFの1Dチャートでは、A点で上昇の基準線クロスが見られます。最初のクロスは雲の上にあるので強いクロスといえますが、非常に重要な遅行スパンがレベルの下にあります(このチャートでは見えません)ので、B点でエントリーする前に、この重要なレベルの上で終値が確定するまで待ちます。この時点では、強気の転換線/基準線のクロスと基準線が上向きだと確認でき、強気の見通しをさらに強めています。ストップロスは、「基準線」の取引戦略のガイドラインに沿って、C点での「基準線」の10pips下に設定しています。
エントリーと損切りの注文を出したら、あとは取引の展開を待つだけです。その後40日間は、基準線の上で順調に上昇していきます。この後、価格は下落し始め、44日目に基準線を割ったため、D点でストップロスに達し、641pipsの利益を獲得することができました。

図16 – 基準線クロスのケーススタディ
雲ブレイクアウト
雲ブレイクアウト取引は、複数の時間軸で使用できる取引戦略ですが、ポジショントレーダーの時間軸(例えば、日足、週足、月足)で最も広く使用されています。雲ブレイクアウトトレードは、一目均衡表チャートシステムが提供する最も純粋なトレンド取引の形態であり、雲と価格の関係性のみに注目してシグナルを確認します。これは、価格が雲の上にあるか下にあるかだけに注目する「大局観」取引といえます。一言で言えば、雲のブレイクアウト取引は、価格が雲の上限に接近したときがロングのシグナル、雲の下限に接近したときがショートのシグナルとなります。
雲ブレイクアウトの買いシグナルの例として、下の図17のチャートを参照してください。

図17 – 雲ブレイクアウト買いシグナル
エントリー
雲ブレイクアウトのエントリーは簡単で、価格が雲の上・下を通過したら、ブレイクアウトの方向に取引を行う。しかし、ブレイクアウトがフラットトップ・ボトム(平らな上限/下限)の雲から発生した場合には、ブレイクアウトが「フェイク」にならないように注意が必要です。このような場合には、ブレイクアウトした雲の上や下にアンカーとなるような手がかりを探しておくとよいでしょう。このアンカーは、遅行スパンなど、取引の方向性や勢いを固めるための追加のサポートやレジスタンスとなるような手がかりであれば何でも構いません。
雲ブレイクアウトのトレーダーは、取引をする前に、先頭の雲のセンチメントを上手に利用します。もし、雲がベアであり、ブレイクアウトもベアであれば、ブレイクアウトが過度の異常なボラティリティにより発生した訳ではなく、市場のセンチメントによるものだと判断できます。もし、先頭の雲がブレイクアウトの方向と矛盾している場合、トレーダーは、雲が取引の方向と一致するまで待つか、リスクの増加を考慮して、より保守的なポジションサイズを持つことをお勧めします。
エグジット
エグジットは、一目均衡表雲ブレイクアウトトレード全体の中で最も簡単な部分です。トレーダーは、価格が雲の反対側に抜け、ストップロスが発動するのを待つだけです。トレーダーは、取引の全期間中、雲を元に損切りをしているので、利益を最大化し、リスクを最小化することができます。
ストップロスの配置
大局的なトレンドトレードであるため、雲のブレイクアウト戦略のストップロスは、トレンドが無効になった時点で決済されます。したがって、損切りは、雲の境界線から 10~20pips離れた雲の反対側に置かなければなりません。もし、価格が損切りポイントに到達した場合、トレーダーは、トレンドが大きく変化したと確信することができます。
利確目標の設定
一般的なテイクプロフィットの目標値を使うこともできますが、長期的なトレンド取引では、雲の動きに合わせて、損切りを上下させていくことが重要です。この方法なら、プライスアクションがトレンドの終了を明確に示すまで取引を終了することなく、トレンドを最大限に活用することができます。
ケーススタディ
下の図18の豪ドル・米ドル(AUD/USD)の週足チャートでは、A点で弱気の雲をブレイクアウトしていることがわかります。雲が明らかに弱気であることがわかり、ブレイクアウトのセンチメントを確認することができます。価格は、フラットボトムの雲からブレイクしているので、誤ったブレイクアウトでエントリーするリスクを減らすために、エントリーする前に、最後の遅行スパンのサポートである0.7600 を下回る終値を探しそのポイントに来るまで待ちます。その後まもなくB点に到達し、ショートでエントリーします。
ストップロスは、ブレイクアウトのガイドラインに沿って、ブレイクアウトが起こった雲の反対側から 10~20 pips離れたところに置きます。この場合は、雲の上限から20pips離れたC点(0.7994)にストップロスを置きます。
エントリーと損切りの注文を出したら、あとは、雲の流れに乗って損切りを移動させながら、値動きが進んでいくのを待つだけです。週足チャートを使っているので、非常に長期的な取引になります。この場合、約2年後、価格が十分に上昇して、雲を抜け出して反対側に移動し、D点で20pips離れたところで決済し、1100pips以上の利益を獲得しました。

図18 – 雲ブレイクアウトのケーススタディ
先行スパンクロス
先行スパンクロスは、一目均衡表システムの中では、あまり知られていない取引方法の一つです。これは、「先行スパンクロス」が単独の取引戦略として使用されるというよりも、他の取引戦略との追加確認として使用される傾向が強いためです。しかし、それにもかかわらず、しっかりとしたトレンドトレード戦略であり、単独での利用でも問題ありません。
先行スパンクロス戦略は、雲のブレイクアウト戦略と同様に、雲を利用してシグナルを出すので、日足チャート以上の長い時間軸で使うのが最適です。先行スパンクロスは、先行スパンAが、先行スパンBと交差したときにシグナルが出ます。先行スパンAが先行スパンBを下から上にクロスした場合は、強気シグナルです。上から下にクロスしてきたら弱気シグナルです。ただし、一目均衡表システム内の他の取引戦略と同じように、先行スパンのクロスシグナルは、取引をする前に、一目均衡表全体に対して評価する必要があります。
先行スパンクロス戦略で注意しなければならないことは、「クロス」シグナルは、雲が26日間、先を行っているので、実際のプライスアクションの26日先に発生しているということです。この関係は、チャートで現在の価格を見れば一目瞭然です。また、すべての一目均衡表を使用したFX戦略は、一目均衡表の全体像を念頭に置いて実行する必要がありますが、これは特に先行スパンクロスでは重要です。したがって、まず上位の時間軸で全体的なトレンドを判断し、下位の時間軸ではそのトレンドに沿った先行スパンのシグナルのみを取ることが、先行スパンクロス戦略の最良の方法となります。
一般的に先行スパンのクロス戦略は、強・中・弱の3つに大きく分類されます。
強い先行スパンクロスのシグナル
強い先行スパンクロスのシグナルは、先行スパンクロスのセンチメントと雲の同じ側に価格(ローソク足)がある場合に発生します。
中程度の先行スパンクロスシグナル
中程度の先行スパンクロスのシグナルは、先行スパンクロスのタイミングで価格(ローソク足)が雲の中に入っているときに発生します。
弱い先行スパンクロスシグナル
弱い先行スパンクロスのシグナルは、先行スパンクロスのセンチメントと雲の反対側に価格(ローソク足)がある場合に発生します。
下図19のチャートは、先行スパンクロスの分類を示したものです。縦の破線は、価格と先行スパンクロスの関係を表しています。したがって、A点は強気の先行スパンクロスであり、その時点で価格B点が雲の上で取引されていたことから、「強い」買いシグナルに分類されます。同様に、C点は弱気の先行スパンクロスであり、価格D点が雲の下にあるため、強い売りシグナルが出ています。E点の先行スパンクロスは、その時点で価格F点が雲の中で取引されていたため、中程度の買いシグナルを発生させました。

図19 – 先行スパンクロスの分類
エントリー
先行スパンクロスのエントリーは比較的簡単ですが、前述のように、エントリー前に、より古い時間帯の全体的なトレンドにさらに注意を払う必要があります。古い時間帯のトレンドを確認した後、取引する時間帯のトレンドを確認し、それと同じ方向に、先行スパンクロスを探します。適切なポイントを見つけたら、先行スパンのセンチメントの方向にポジションを取ります。トレーダーは、一目均衡表の取引戦略と同様に、クロスの相対的な強さ(雲に対する価格の位置関係)と、クロス時点での一目均衡表のセンチメントを考慮して、エントリーを行うことをお勧めします。
ここで言及しておきたいのは、A点で確認された強い買いシグナルは、日足レベルでは比較的強いものの週足と月足チャートは下降トレンドであり、一致していなかったということです。このトレードのように先行スパンクロスをうまく利用していても、実際にはpipsを失っていたことになります。このことは、複数の時間軸でセンチメントを評価し、全体的なトレンドに合わせて取引することの重要性を示しています。
エグジット
先行スパンクロス取引の最も一般的な出口戦略は、一般的に取引の反対方向への先行スパンクロスが発生した際だと考えられますが、トレーダーのリスク許容度と利確目標に応じて他の出口戦略が取られることもあります。
ストップロスの配置
先行スパンクロスは、雲のブレイクアウト戦略のような「大局的」なトレンドトレード戦略であるため、ストップロスを雲の反対側、雲の境界から10~20pips離れた位置に設定します。
利確目標の設定
先行スパンクロス取引戦略では、一般的な利確ターゲットでも設定することができますが、取引の反対方向に先行スパンクロスが発生するのを待つのが、長期的なトレンドトレードに沿った方法です。この方法なら、トレンドが終わったことが明確に示されるまでポジションを決済することが無いので、トレンドを最大限に活用することができます。
ケーススタディ
下の図20のUSD/CADの日足チャートでは、A点に弱気の先行スパンクロスが見られます。このクロスはB点のローソク足に対応しています。また、このシグナルの方向性は、週足、月足の時間軸では、全体的な下降トレンドと一致していることを確認しており、トレンドに沿ったトレードをしていることがわかります。とはいえ、ローソク足のすぐ右にあるフラットボトムの雲が価格を引き付ける可能性があるため、誤ったブレイクアウトに巻き込まれないように、保守的なエントリーポイントを探す必要があります。最後の遅行スパンのサポートである1.2292が、取引の方向性や勢いを固めるための良いアンカーポイントのように見えます。価格は、数日後にこのポイントを下回り、1.2290でクローズしたので、C点でショートをエントリーします。
ストップロスは、雲のブレイクアウトのルールに従って、取引が行われている雲の反対側から 10~20 pips離れたところに置きます。この場合、エントリーしたローソク足のポイントの雲の上から20pips離れたところD点(1.2542)にストップロスを置きます。
エントリーとストップロスの注文を出したら、雲の動きに合わせてストップロスを下に移動させながら、トレードが展開されるのを待ちます。このケースでは、4ヶ月以上経った後、価格レンジは、E点で取引の反対方向に新たな先行スパンのクロスを作りました。

図20 – 先行スパンクロスのケーススタディ
遅行スパンクロス
一目均衡表チャートを長く使ってきた人にとって、遅行スパンのクロス戦略を活用することは、自然です。なぜなら、遅行スパンクロスは、基本的には「遅行スパンの確認」であり、経験豊富な一目均衡表のトレーダーは、どのような取引をする前にも必ずチャートのセンチメントを確認するために利用しています。この確認は、遅行スパンが価格(ローソク足)をクロスするという形で行われます。下から上に向かって価格を横切った場合は、強気のシグナルです。上から下にクロスした場合は、弱気シグナルとなります。
このように、私たちはすでに確認戦略として、遅行スパンクロスの力を知っています。遅行スパンクロスは、非常に良い情報源であると同時にそれ自体で独立した取引戦略として使用することができます。
他の多くの一目均衡表のトレード戦略と同様に、遅行スパンクロス戦略では、価格と相場の関係性を利用して、シグナルを「強」「中立」「弱」の3つに大きく分類しています。
強い遅行スパンクロスシグナル
価格が雲の上にあり、遅行スパンが上向きにクロスした場合は、強い買いシグナルが出ています。
価格が雲の下にあり、遅行スパンが下向きにクロスした場合は、強い売りシグナルが出ています。
中程度の遅行スパンクロスシグナル
価格が雲の中にあり、遅行スパンが上向きにクロスした場合は、中程度の買いシグナルが出ています。
価格が雲の中にあり、遅行スパンが下向きにクロスした場合は、中程度の売りシグナルが出ています。
弱い遅行スパンクロスシグナル
価格が雲の下にあり、遅行スパンが上向きにクロスした場合は、弱い買いシグナルが出ています。
価格が雲の上にあり、遅行スパンが上向きにクロスした場合は、弱い売りシグナルが出ています。
下の図21のチャートには、遅行スパンのクロスの例がいくつか示されています。遅行スパンは終値を過去26日分シフトさせた指標であることを考えると、遅行スパンと、現在のローソク足の位置と雲との関係を常に念頭に置いておく必要があります。A1点は、遅行スパンが価格(ローソク足)を下向きにクロスしたポイントです。しかし、同じ価格帯のA2点のローソク足は雲の上にあるので、このクロスは「弱いの売りのシグナル」に分類されます。B1点とB2点では、遅行スパンが上向きにクロスし、その時点での終値のローソク足が雲の上にあったため、強い買いのシグナルと見られます。C1点とC2点は、弱い売りのシグナルです。

図21 – 遅行スパンクロスの分類
エントリー
遅行スパンクロスのエントリーは比較的簡単で、クロスの強さや他のチャートシグナルを考慮して、遅行スパンクロスが発生した方向にポジションをとります。成功確率を高めるために、トレーダーは、現時点で遅行スパン自体が雲から離れているポイントを探します。遅行スパンは、価格(ローソク足)と同じように、雲と連動します。
エグジット
遅行スパンクロス取引の最も一般的な出口戦略は、一般的に取引の反対方向への遅行スパンクロスが発生した際だと考えられますが、トレーダーのリスク許容度と利確目標に応じて他の出口戦略が取られることもあります。
ストップロスの配置
遅行スパン戦略は、他の戦略とは違い、ストップロスの配置のために一目均衡表の仕組みを利用するものではありません。その代わりに、時間軸と資金管理のルールを考慮して、ストップロスを設定するための適切な方法を探す必要があります。
利確目標の設定
遅行スパンクロス戦略の利確は、2つの方法でアプローチすることができます。デイトレーダー/スイングトレーダーの視点では、キーレベルを使用して利確目標を設定することです。ポジショントレーダーの視点では、特定の目標を設定せずに、現在のトレンドが取引の反対方向に遅行スパンクロスが発生するのを待つというアプローチです。
ケーススタディ
図22のUSD/CHFの日足チャートでは、A点で上昇の遅行スパンのクロスが見られます。遅行スパンは1.2090にある遅行スパンポイントの大きなレジスタンスをまだ下回っています。さらに、転換線と基準線はフラットとなっており、追加の確認材料にはなっていません。したがって、ロングで入る前に、より納得のいくポイントを待ちます。これは、5日後のB1点で発見できます。ローソク足の終値ベースでレジスタンスを抜けるのを待ち、B2点の1.2164でロングに入ります。このエントリーに対する信頼度は、その後の強気の転換線/基準線のクロスによって高められています。
ストップロスは、現在の環境を考慮して、1.1956の基準線のすぐ下に置くことにします。このポイントを下回れば、遅行スパンが弱気のクロスをするだけでなく、価格も弱気のクロスをすることになり、どちらもセンチメントが弱気になることを意味しています。
エントリーとストップロスの注文を出したら、あとは時間が経過するのを待ちます。トレードスタイルに応じて、リスク管理を厳しくするために、逆指値注文と一緒に損切りを追いかけることもできますし、トレンドと逆方向へのクロスを待つこともできます。この場合は、2ヶ月弱後(C1点)で反対方向への遅行スパンクロスが発生し、1.2619(C2点)で450pips以上の利益を獲得し、取引を終了しました。遅行スパンクロスが雲の上にあるため、遅行スパンクロスだけでは「弱いシグナル」と考えられますが、注目すべきは売りの転換線/基準線クロスに加え、弱気の三役逆転を形成し始めていることです。
別の方法として、もしこの取引で遅行スパンクロスを待つのではなく、基準線をトレーリングストップとして使用していたら、1.2735レベルのどこかで取引を終了し、560pips以上の利益を得ることができたでしょう。

図22 – 遅行スパンクロスのケーススタディ
まとめ 一目均衡表の見方
1. 価格 VS 雲
- 価格が雲の上にある場合 – 買いシグナルだけを探して、転換線が基準線を上にクロスしたときに買い
- 価格が雲を下にある場合 – 売りシグナルだけを探して、転換線が基準線を下にクロスしたときに売り
- 価格が雲の中に入っている場合 – 均衡しているので取引しない
2. 遅行スパンを使ってトレンドを確認する
3. 利確目標 – 1.転換線が基準線とクロスするとき、2.価格が基準線をクロスするとき
4.ストップロス – 直近安値
一目均衡表の正しい見方を理解することも大切ですが、ある程度の練習が必要な場合は、実際にMT4の一目均衡表を利用し、学ぶことができます。
成功を願っています!